時代の流れとともに、私たちのまち山口でも、お正月前後の過ごし方が次第に変わってきましたが、今も努力をしながら昔の伝統を引き継いでいるところもあります。
そんななかから、下山口地区の“しめ縄づくり”と上山口のお正月の行事をご紹介します。
下山口のしめ縄づくり
神社では新しい“しめ縄”(漢字で書くと“注連縄”)に取り替えて新年を迎えます。
下山口地区では、自治会の主催で、丸山稲荷神社のしめ縄をつくる伝統行事が、毎年12月中頃に行われています。
今年は12月11日の日曜日、9時から下山口会館の前でしめ縄づくりが始まりました。
また公智神社のしめ縄は、山口の当番地区が神社に奉納しますが、今年は下山口地区が当番です。
公智神社に奉納するものもつくるため、作業は午後2時ごろまで続きました。
実際の作業では、丸山稲荷神社総代の方たちが中心となって、山口中学校生徒の有志もお手伝いをしています。
では、しめ縄がどの様にしてつくられるか簡単にご紹介しましょう。
①稲わらの株の部分をカケヤや木槌等で叩いて、「そうぶ(わらの袴や屑)」が外れやすくします。
※そうぶが付いていると、強く美しいしめ縄ができません。
②「そうぶ」をそぐる(取り除く)作業をします。
③「わらかち」
そうぶを取り除いたあとの、わらの株から先っぽまでを、カケヤや木槌で叩いて、わらの筒状や節を潰していきます。
※「わらかち」をすると、わらが全体が柔らかくなって曲がりやすくなるので、しめ縄を形良く「なう」ことができます。
しめ縄ない(太いしめ縄)
縄を編むことを「なう」名詞で「ない」と言います。
太い大きなしめ縄の場合、簡単な櫓を組んで縦方向に「なって」行き、3人が「ない」役、1~3人がわら材料の渡し役をして、4~6人で作業をします。
① 三つのわら束の株の部分を細い縄で束ねます。
② 3人の「ない役」が、よりをかけながら(ねじりながら)、隣の人に送ります。
しめ縄は“左ない”をします。 荷造りなどの縄は“右ない”なので、逆のねじり方です。
③何回か繰り返すと細くなるので、わらを継ぎ足して、なっていきます。
④上記の繰り返しで長いしめ縄になります。
細いしめ縄の場合
※動画でご覧ください(youtube)
一人で両手のひらを使ってないます。
二つの細いわら束をクロス状に手のひらにはさみ、手のひらをよじり、指の付け根付近(両手を合わせた時に密着する部分)で二つのわら束をそれぞれによりをかけながら、なっていきます。
手のひらをよじる方向で、右ない、左ないになるかが決まります。
二つの束のないが終われば、残りの一つの束によりをかけながら捻じれに沿わせてなっていきます。
以上で三っつの束でなった形状になります。
最後は、仕上げです
「ひげ切」作業をします。わら屑がところどころに、ひげ状に飛び出ているので、それをはさみで切り落とします。しめ縄の完成です。
※しめ縄づくりは熟練を要する作業で、先輩の指導がなければできません。
中学生の参加が嬉しく、また頼もしく感じました。
しめ縄づくりをご紹介しましたが、次は、新年を迎えようとする上山口地区の様子をご紹介しましょう。
大晦日から新年へ…上山口
大晦日、恒例の紅白歌合戦が終わり、行く年くる年が始まる頃、上山口の各家では、新年を迎えるためのお参りに出発します。
まずは地元の明徳寺へ。参拝者は鐘撞堂で除夜の鐘をつきます。本堂では檀家世話役さんによる甘酒が振舞われます。
次に山口町の氏神様公智神社へ初詣。ここでは、境内でのかがり火で暖をとります。
最後には上山口の守り神、城の垣内稲荷神社への参拝となります。お社横の田では大きな丸太のかがり火で暖を取り、お神酒をいただきながら新年の抱負を語らいます。
家内安全を祈願し、参拝者には白矢が授与されます。
さあ年が明けました。今度は“とんど”です
昭和30年頃までは、子供たちが主体となって、とんど作りを行っていました。上級生と一緒に、冬休みを利用して竹・笹を刈りに行き、とんど作りをしました。
その後とんど作りの習慣は、しばらく途絶えましたが、昭和55年になって自治会・婦人会・消防団により復活しました。現在では、自治会が中心となっています。
自治会、消防団、老人クラブなどの会員が、成人の日の前日の朝8時に上山口公会堂に集合し、竹・笹・とんどの芯(松の木)の採取・運搬を行います。
その後、上山口を上・下に分け、2カ所の田で直径3mほどのとんどを組み立て、午前中には作業が終了します。
婦人会は、朝から昼食の準備。上山口恒例のおでん・おにぎり作りが担当です。
組み立て作業終了後は、全員が公会堂に集まり食事。地域の話題や新年の抱負で盛り上がります。
明けて、成人の日の朝7時には、役員の年男に当たる方が、恵方の方角から点火、お神酒をいただきながらとんどの守りに当たり、最後には芯柱を恵方に倒します。
前日に準備しておいた注連縄(しめなわ)・かみのしき・お札などを燃やします。
子供が書いた書初めも竹竿の先に付けて燃やします。このとき、燃えた書初めが空に向かって上がれば、お習字が上手くなると言われていますが、書初めを燃やす子供の姿も年々少なくなってきました。
最近では減っていますが、家から持参した餅をとんどのわら灰や炭火で焼き、雑煮や小豆粥を頂きます。これを頂くと1年間健康でいられると言われています。
また、とんどの灰は家の周りに撒くと魔除けになるといわれ、持ち帰る方もおられます。